カラフル(原恵一)

映画「カラフル(監督: 原恵一)」を観てきた。映画の日で夕方だったということもあって、学校帰りと思しき子供たちや親子連れがたくさんいた。

天上界と下界の狭間で、死んだ<ぼく>の魂は漂っていた。するとプラプラという天使?が話しかけ、<ぼく>が抽選に当たり、もう一度下界に戻って再挑戦するチャンスが与えられたと告げる。こうして、<ぼく>の魂は自殺したばかりの「小林 真」という名の中学生の体に入りこみ「小林 真」になって生きる事になる。「真」は、家庭では彼が軽蔑する父、不倫中の母、出来の悪い弟を馬鹿にする兄に囲まれ、学校でも友達も無く成績も最低であった。また、密かに思いを寄せる後輩は援助交際をしていた。しかし、「真」として生きる<ぼく>のまわりでは、様々なことが動き出す。そして、<ぼく>は『ある事』に気づくのだった…

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背が低い、いじめられている、コンプレックスの塊である真。母は不倫。思いを寄せる少女は援助交際。そんな二人が相次いでラブホテルを出入りするところを見かけてしまい、真は母が服用している薬で自殺を図った。<ぼく>は蘇生した少年として、人生をリスタートすることになる。
他人の体験に基づくコンプレックスなんて、<ぼく>にとっては悩むに値しないとまではいわないけど、自殺した真本人ほど深刻なものではない。真の生前の情報はプラプラから与えられたわずかなもので、「先入観を持たないほうがいい」というプラプラの配慮から、それは必要最低限に留められる。<ぼく>自身がやや生きることに投げやりであることが手伝ったと思うけど、そのリスタートがそれなりにうまくいくのは当たり前なのだ。ただ、この映画で描かれるのはそういうサクセスではない。
一般的に自殺はいけないことだけど、自殺を思いとどまらせるために否定的な物言いがよくないといわれることも、しばしばある。それを上手に言葉にするのは難しいことだけど、真が<ぼく>が最後に手に入れるのはそういうことだ。自分を含めて周囲には色んな喜びや苦しみがあって、それらをそれなりに理解してそれなりに妥協できれば、そこそこやっていける。
原作に関する知識を一切持たずに観たのでついファンタジーな展開を期待してしまった。その点でちょっと拍子抜けだったけど、幅広い世代でそれなりに楽しめる映画だと思う。
黒歴史扱いされがちな思春期でローティーンのころの痛々しい言動を、リアルに見せ付けられ胸をえぐられる。「リリィ・シュシュのすべて」や「オナニーマスター黒沢」に近いといえば近いけど、そこまで生々しくないのはアニメに良さだったり製作者の手腕なんだろうなー。
幅広い世代で楽しめる……、なんて書いているけど、けっこう胸にズキンとくるシーンはある。真が母親にブチまけるところがよかった。あと家族で鍋を囲む場面で、母親と真につられてすすり泣いている客がけっこういた。オナマスやリリィ・シュシュほど痛々しい展開はありません。