山川竜司の引退

私、実家が札幌の近くの市区町村にございまして、最近地震に影響で仕事がハケてしまったということで先週は帰省しておりました。友人と札幌の中心街で食事することになった際、ふと山川竜司選手のスナックに行ってみようと思いついた。

山川竜司というレスラー

山川は大日本プロレス所属のデスマッチファイターで、松永光弘ミスター・ポーゴといった選手達の次世代を気づいたパイオニアだと思う。シャドウWXや今は新日本プロレス本間朋晃も同じ時期のデスマッチシーンを盛り上げていた。気になり始めたのは、全日本プロレスの中継が終わってノア中継が始まるまでの繋ぎで放送していた、コロッセオという番組がキッカケだった。というか、インディ全般に強く興味を持つようになったキッカケでもあるんだけど。デスマッチアイテムといえば有刺鉄線がせいぜいで、ときどき見かけるガラスデスマッチとか「正気の沙汰ではありませんなー」さぞ試合もレベルも低いんだろうと決めつけていた節が、自分にはあった。
コロッセオは30分番組で、前半に新日本プロレスを除く各団体の大会ダイジェストを流して、後半は旗揚げ戦以降のノアの試合をダイジェストで流していた。
大日本プロレスは、何より蛍光灯のインパクトが強かった。蛍光灯でしばき合い、ボディスラムで蛍光灯の上へ投げ落とし、試合が半ばに差し掛かる頃には両者の背中がギザギザに刻まれて真っ赤っかだ。他にも屋外でのファイヤーや高所落下スポットなど、狂った見どころは多かった。一方で、大日本プロレスの試合はダイジェストでも伝わる程度で、試合のレベルは高かったと思う。今もデスマッチアイテム云々の以前に高いレベルの試合をやっているし、大日本プロレスに惹きつけられた理由はそれが大きい。

大日本プロレス以前のデスマッチシーンといえば、大仁田厚FMWW★INGがあった。FMWでは有刺鉄線・電流爆破に代表されるデスマッチと「涙のカリスマ」ともてはやされた大仁田自身のキャラクターに依るところが大きかった。W★INGは松永とポーゴのようなカルトなデスマッチファイターに加え、ビクター・キニョネス率いるプエルトリコの怪奇派レスラーによるバラエティ豊かなデスマッチが売りだった、と思う。ま、リアルタイムでは週プロで読むくらいだったから、正確ではないかもしれないが。ただ、試合のレベルはお世辞にも高いものではなかった。レベル低い=つまらない、ではないから面白いんだけど。特にW★INGは。
つまり、大日本プロレスから受けた衝撃は、既存のデスマッチをより過激にしたうえ、レスリングとしても高いレベルを保っていることだ。山川竜司は、大日本プロレスのデスマッチシーンを牽引していた時期が確かにあった。

そしてフェードアウトする

大日本プロレスと山川の人気がピークに達していたある時期、事故が起きた。来日していた外国人選手のパワーボムを場外で食らい、頭蓋骨骨折という重傷を負った。同年の横浜アリーナ大会で復帰するも、他の体調の問題もあって、やがてフェードアウトしてしまう。
俺が上京したのは2002年の秋頃で、その頃から翌春にかけて2回くらい大日本プロレスを後楽園で観戦した記憶があるけど、精彩を欠いた山川にメンズテイオーが怒って「リングネーム剥奪だ!」と言っていた記憶がある。山川よりは沼澤のデスマッチデビュー戦のほうがインパクト強かった。

薄野プロレス YAMARYUにて……

発売中の週プロに書いてあることだとは思うが、山川は来年春に引退することを決めている。札幌のスナックは4月いっぱいで閉店し、5月13日に横浜・関内の店舗で営業再開することになっている。練習の時間を作ることが目的だから、深夜1時でキッチリ閉め、12月から引退のためのツアーに帯同するそうだ。
頭蓋骨骨折している関係で、大日本プロレス以外のリングには上がれないと話していた。どこの団体だって、自分のとこのリングで事故を起こされてはかなわない……。「でも、」と続けた言葉が、今でも印象深く頭に残ってる。
「でも、骨折してよかったと思っている。怪我がなかったら」
あの大怪我があったからこそ、その復帰戦のために大日本プロレス横浜アリーナで大会を開くことができたのだから、と。
正直、これはやりきれない話だ。なるほど、確かに当時CZW勢との抗争が盛り上がっていたとはいえ、怪我がなければもしかしたら横浜文体止まりだったかもしれない。しかし、怪我がなければ、山川のその後のキャリアと大日本プロレスは違った形になっていたのかもしれない。でも、それは分からないし、考えるだけ野暮だと思うが、想像せずにはいられない。山川の復帰戦の舞台となった横浜アリーナを、それ以降大日本プロレスは使っていない。瀕死の重傷を負ってまでリングに立ち続ける選手の考えや採った行動に、観戦者がどうこう口を挟んだり意見することはできない。
と書きつつも、酔って失礼なことを言ってしまい、それは申し訳なかったです。ごめんなさい。

来年の春に予定されている山川の引退試合は、本人とファンと関連する選手達にとってよりよい形で実現されればなと思う。大日本プロレスは、一昨年の葛西・伊東のシングル戦からご無沙汰だけど、今年はできるだけ観るようにしよう。

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